数学の記述答案の指導があります。 数学の記述答案は数学ができる東大クラスの学生でないと添削することができません。 また、プロの予備校講師が大勢の人に教える大教室型の塾などでは、頻繁に数学の自分の答案を添削してもらえる機会もおおくありません。 しかし、東大はもちろんのこと難関大学の二次試験では、数学は答えがあっていれば満点というわけではありません。 自分の解答にどのように考えてたどり着いたのか、誰が見ても理解できるように記述しなければいけません。 この記事では、いくつかの解答例を例にあげて、どのようなことに気をつけて記述していかなければならないのか、解説していきます。
網羅系参考書の記述を真似る
特に、高校数学を勉強してまだ間もない人や、数学の問題で記述を意識し始めて日が浅い人は、どこまで記述を書けばよいのかわからないという人が多いです。 そこでまずは、目安として青チャートやFocus Goldなどの網羅系参考書の解答解説の記述を紹介しています。 例えば、一対一対応や4stepなどの問題集では、解答解説があまり詳しくありません。 正式な問題集として販売されているので、これらの問題集を見ると、メモ書き程度でいいのかなどと思ってしまいやすいです。 しかし、これらの問題集は絶対に必要とされる記述が抜けていたり、解説として読んでもわかりにくいものが多いです。 なので、青チャートやFocus Goldなどの網羅系参考書を参考にするのが一番良いのです。解答例の紹介
それでは、具体的にそれぞれ、模範的な解答例と良くない解答例を見比べて、実際に数学の記述でなにが要求されるのか、説明していきます。 実際の解答例を見るとわかりやすいので、是非参考にしてみてください!解答例1
まず、解答例1では、以下のような二変数関数の問題を取り上げたいと思います。実数x, yに対して、x^2 + y^2 = 1 が成り立っているときに、x^2 + yの最大値、最小値、及び、そのときのx, yの値を求めよ。
こちらは、一般的な二変数関数の問題です。
ちょうど、数1Aの二次関数という分野で、青チャートの応用問題という位置づけで始めて登場します。
この二次関数というのは、高校数学の勉強を始めたばかりという人が、記述を身につけるのに効果的な分野になります。
このような問題は、数2Bの図形と方程式にも登場しますが、今回は、二次関数で学ぶ解法での解答を紹介します。
それでは、解答例を見ていきましょう。
解答例A
解答例B
まず、解答例AとBでは、文字数が全く違います。
解答例Bの方が、しっかりと文字で説明が書かれています。
それに対して、解答例Aは、ただの式の羅列になっていて、どの式が何を表しているのか、そもそも何を求めたいのかがわかりにくいです。
基本的に数学の解答は、解答例Bのように、文章として解答の根拠が明示されている必要があります。
そして、問題を仮に読んでいない人が見ても(もちろん数学ができる人が見てということですが)、問題の内容がなにか、何を求めているのかわかるように記述しなければなりません。
この点が大きく異なります。
皆さんも、数学の記述を書くときは、式の羅列ではなく、相手に問題の内容がわかるように、文章で説明するつもりで改定見てください。
そして、文字数が青チャートやFocus Goldの問題集の解答から少なすぎないか、確認してみてください。
また、文字の定義についても、しっかりとする必要があります。
解答例Aでは、 f(y) という関数 f を急に導入していますが、この関数 f は、問題文で設定されたものではありません。
それに対して、解答例Bでは、 z という文字をしっかりと定義してから、グラフの縦軸に z と書いています。
このように、問題文で最初から定義されていない文字は、必ず定義を書かなければいけません。
解答例Aのように f(y) という文字を使いたいのであれば、
x^2 + y = f(y) とする。
もしくは、
与えられた関数を f(y) とすると、
というふうにあらかじめ記述しておくべきなのです。
自分の答案で日頃、問題文にない文字を勝手に使っていないか、もう一度振り返ってみてください。
この2つの答案が、異なる点はもう1点あります。
それは、グラフの有無です。
図やグラフを書くべきか、そうでないかは、大きな問題です。
この場合は青チャートやFocus Goldのような網羅系問題集の解答にも図やグラフが書かれているのか確認してみたください。
そして、そこにあれば、基本的に見習ったほうがよいです。
この場合、グラフは最大値と最小値を導出するための根拠となっています。
解答例Aを書いた人も頭の中で、もしくは計算用紙などを使ってグラフを想像して答えを出しているはずです。
それを、書いて根拠として明示したかしていないかの違いなのです。
なので、解答例Aを採点する人は、何を根拠に最大値と最小値を導いたのかわからないのです。
(もちろん想像することはできますが、書いてあること以外は採点してくれません。)
このように、最大値と最小値の根拠になりうる図やグラフは必ず書きましょう。
また、グラフを書く際に注意点があります。
まず、グラフや図、そして表はあくまでも付属物であり、それだけ書いても、何を表しているのかわからなければ、意味がありません。
解答例Bの場合、グラフを書く前に「 z = 1 – y^2 + y のグラフは下図のようになる。」と下の図が何を表しているのか説明があります。
その後、「このグラフより、」とグラフを根拠としてわかるようにしています。
このように、グラフや図、表が、何を表し、何に使われているのかわかるような記述を書きましょう。
さらに、グラフを書く際は縦軸、横軸の文字と原点 O を書くようにしましょう。
この場合、 z が y の関数になっているので、横軸には y 縦軸には z を書きます。
軸も常に x と y というわけではなく、 s と t や α と β があります。
軸の文字を間違えてしまう人も多いので注意しましょう。
さらに、実線と点線の区別をつけるとよいです。
例えば、この場合実線部が、この関数の定義域内のグラフを表しており、点線部がこの関数の定義域外のグラフを表しています。
このように、グラフを書く際も注意が必要なのです。
解答例2
次に、解答例2として、以下のような、グラフに囲まれた面積を求める問題を取り上げます。2曲線 y = log x^2 及び y = (log x)^2 によって囲まれた領域の面積を求めよ。
まず、 y = log x^2 の方は y = 2log x と変換できるので普通の対数関数のグラフです。
なので、グラフを図示することは簡単にできます。
しかし、 y = (log x)^2 は簡単には図示できないので、増減表を書いて、交点を出して、領域を図示する必要があります。
この過程で注意すべき点がいくつかあるので、この問題の解答例を見ていきましょう。
解答例C
解答例D
まず最初に解答例Cでは、(導関数)= 0 の解を示す前に、増減表を書いています。
しかし、青チャートやFocus Goldなどの参考書を見ると、増減表を書く前には、必ずそれに必要な情報を先に導出してから書きます。
なので、極値を取る変数の値や、変曲点のx座標、極限はどうなのかなど、必要な情報をすべて示した上で、書かなくてはいけません。
この場合(導関数)= 0のとき、 log x = 0 であり、 x = 1 になるというのは頭で簡単に計算できるかもしれませんが、必ず書く必要があるのです。
また、解答例Cでは、一応増減表やグラフの説明は書かれています。
しかし、何の関数の増減表なのか、何の関数のグラフなのかが書いてありません。
それに対して、解答例Dの方では、しっかりとどの関数の増減表あるいはグラフなのか、はっきりと書かれています。
このように、グラフや表、図などを書く際は、前の問題でも述べたとおりその図の説明を必ずしなければいけません。
さらに、その図の説明は必ず具体的でなければいけません。
この場合、関数は2つあるわけで、どちらの関数の増減表なのか、グラフなのかをしっかりと記す必要があるのです。
次に、面積を求める際に S の定義をしているかどうかという違いがあります。
問題をよく見ると、 S という文字はどこにも使われていません。
このように、問題文で定義されていない文字や番号を使う際は必ず解答の中で定義しなくてはいけません。
(円周率 π やネイピア数 e は、例外。虚数単位 i は、大学に入ると他の文字を虚数単位とする学問もあるので、グレーゾーンではあるが、入試問題では、必要な場合はたいてい定義が問題文についている。)
解答例Cの場合は、いきなり S = __ と積分を書いてしまっています。
これは、確実に減点されるので、注意が必要です。
解答例Dでは、積分を使う前に、 S という文字の定義をしっかり書いています。
また、(面積)= ___ と書き進めるのもありだと思います。
最後に、解答例Cと解答例Dを見比べたときの決定的な違いについて指摘します。
それは、必要最低限の情報のみ記述しようとするのか、採点者の100%自分の意図が伝わるように、解答を書いているかの違いになります。
そのように考えると、解答例Cではただの情報の羅列に近くなってしまっているのです。
数学ができる人が見ればどのような解答プロセスで解いたのか十分推察はできますが、入試は「書いてあることしか採点されない」のです。
それに対して、解答例Dでは、十分な量の記述があり、何を根拠に導き出したのか、一つ一つが明確に説明されています。
このように、一生の決まる大学受験ですので、どんな人が採点しても必ず点数が来るよう、記述は必要最低限からややオーバーして、十分書きましょう。
そして、時間内にそれだけの記述量を解答欄に記載することができるスピードも重要です。
よって、日頃から模試や入試で記述する分だけしっかり練習として書いておくことが大切になるのです。
日々の問題演習をおろそかにせずに、記述を早く書く練習をするつもりでしっかり問題演習に取り組みましょう。